みなさまこんにちは。寒い日が続きますが、風邪などひかずに元気にお過ごしでしょうか?
この季節、様々なウィルス感染などに警戒が必要です。
手洗いうがいを徹底的に取り入れて予防に努めていきましょう!
ところで、多くの方々が、むし歯を作らないようにする方法として、フッ素が効果的だという事は何となく今までに耳にしたことがあると思います。
フッ化物利用の方法には大きく2つに分けることができます。
1、全身応用
経口的に摂取され消化管で吸収されたフッ化物が、歯の形成期にエナメル質に取り込まれ、むし歯抵抗性の高い歯が形成されます。
同時に萌出後の歯の表面にも直接フッ化物が作用します。
水道水フロリデーション、フッ化物錠剤、フッ化物添加食塩、フッ化物添加ミルクが含まれます。
2、局所応用
萌出後の歯面に直接フッ化物を作用させる方法です。
フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤が含まれます。
今回は全身応用の一つである水道水フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整、communal water fluoridation)についてのお話しです。
むし歯を予防するために、フッ化物を利用する方法は、20世紀初めに北米で行われた変色歯の原因調査から端を発したそうです。
歯の表層にあるエナメル質に境界不明瞭の白斑・白濁・白い水平縞が現れたり、中等度になると歯面全体にわたってチョーク様に白濁する現象を歯のフッ素症(斑状歯)といいます。
さらに歯の表面に小さな凹みが加わるとその部位に外来性の色素が沈着し、褐色から黒色を呈することがあります。
しかしながら、むし歯ではないという状態です。
歯の形成期、永久歯では出生から満8歳までの間にフッ化物が高濃度の飲料水を慢性的に摂取すると歯のフッ素症(斑状歯)が発生することがあるそうです。
つまりフッ化物の濃度が高過ぎるとむし歯は抑制されるが、斑状歯になる危険性があるということが分かったのです。
フッ素は自然界に広く分布している元素です。土壌中に280ppm、海水中に1.3ppm含まれています。
地球上の全ての動・植物にも、毎日飲む水やほとんど全ての食品に微量ながら含まれています。
私たちの身体にも存在します。
天然の飲料水中のフッ化物濃度と歯のフッ素症の発現、及びむし歯罹患との関連性が解明され、飲料水中のフッ化物濃度の適正量が導き出されました。
現在世界で実施されている水道水フロリデーションでのフッ化物の至適濃度は国際的に見ると地域による差はありますが、約1ppmという極めて低い濃度です。
ppmとは「100万分の1」の単位で、例えばある物質が1ℓ中に1mg含まれていることを意味します。
使用するフッ化物は、フッ化ナトリウムやフルオロ珪酸というフッ素化合物で、ホタル石や氷晶石、リン鉱石などの自然の鉱物を原料として生産されています。
フッ化物についての水質基準では、WHO(世界保健機関)は1.5ppm以下ですが、わが国の水質基準はその約半分の0.8ppm以下となっています。
また、むし歯予防のための推奨フッ化物濃度については、WHOでは0.7~1.0ppm、米国衛生局では0.7~1.2ppmとなっていて、地域の平均気温の差による飲水量の差から、最適な飲料水中のフッ化物濃度には一定の幅をもたせてあるそうです。
水道水フロリデーションは1945年に米国・カナダの4都市で開始されました。
その後、水道水フロリデーションは、米国内はもとよりオーストラリア・ブラジル・香港・アイルランド・マレーシア・ニュージーランド・シンガポールなど多くの国々や地域に導入されるようになりました。
世界的にみると3億7000万人が水道水フロリデーションを利用していると見積もられています。
しかしながら、先進国では水道水へのフッ化物添加が行われていない国々がたくさんあります。
日本では現在のところ水道水フロリデーションは実施されておりません。
その他、ヨーロッパの国々でも水道水フロリデーションを導入していない国がほとんどです。
ドイツも水道水フロリデーションを導入していない国の一つです。
これは薬物療法にあたるからだそうです。
ドイツでは、フッ化物添加食塩や日常食品などからフッ素の摂取が可能と考えてあえて水道水にフッ化物を添加しない方法を選んだのかと思われます。
毎日の食事の内容に気を配り、口腔内の衛生状態を改善するほうが良い方法だと考えたようです。
そもそも、水道水フロリデーションとは、天然水の中に存在するフッ化物の量を適正な濃度に調整し、その飲料水を摂取することによってむし歯を予防する方法です。
ですから、もし天然のフッ化物濃度が高すぎる場合は適正濃度までフッ化物を除去して調整するという役割があります。
天然水が安全な基準値にあれば問題は無いのですが、議論は続ているようです。
アメリカは国土も広く、気候や地質も地域によって様々です。
ですから、天然水の水質にも様々な違いがあったことから、アメリカは水道水フロリデーションを推奨する国になったのだと思います。
日本でも、アメリカ軍の統治下にあった沖縄県で(1957年~1972年)水道水フロリデーションが実施されていました。
現在の日本の水道水中のフッ化物濃度は低く、むし歯を予防する効果が全く期待できる値でないことは明らかです。
もし、フッ化物の全身応用を考えるのならば食品によるフッ化物摂取を検討すべきなのでしょうか?
政治的な問題もありますので、水道水フロリデーションの実施はわが国では難しいようです。
自主的にフッ化物を摂取するなど、個人の判断に任せられています。
歯科医師
大庭美和子
2020年2月20日 カテゴリ:未分類