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骨膜の新たな役割:がんの進展を
阻む防御機構 ~Nature, vol.634

こんにちは。秋の訪れとともに少し肌寒さを感じる季節になりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、最新の骨とがんの研究から得られた興味深い知見をご紹介いたします。

我が国における死因の第1位は「がん」であり、年間30万人以上がその命を奪われています。
がんは発生した場所(原発巣)に留まらず、がん細胞が周囲の組織に広がり(浸潤)、さらには血液やリンパの流れに乗って他の臓器へ移動(転移)することで、私達の生命を脅かします。
部位別の統計では、大腸がん、肺がん、胃がん、乳がんなどは国内で特に罹患率が高く、身近な病気だと感じている方も多いのではないでしょうか。
世界的に見ると、首から上の領域に発生する「頭頸部がん」も6番目に多いメジャーながんであり、その中でも最も頻度の高いものの一つが我々歯科医師の診療対象である「口腔がん」です。
口腔は、粘膜の直下に骨が存在するユニークなバリア部位です。
口腔がんの多くは口腔粘膜で発生しますが、進行すると腫瘍が直下の顎骨に浸潤し、患者さんの生命予後やQOL(生活の質)を著しく低下させてしまいます。
そのため、口腔がんの骨への浸潤メカニズムの解明と効果的な治療法の確立は喫緊の課題とされてきました。
骨の表面は「骨膜」とよばれる薄い膜状の組織で覆われており、がんが骨に浸潤するためには、まず骨膜に侵入する必要があります。

東京大学の塚崎雅之先生、高柳広先生を中心とする研究グループは、この点に着目し、骨を包む「骨膜」が口腔がんの骨浸潤において重要な役割を果たしているのではないかと考え、研究をスタートさせました。
まず、口腔がん患者の検体を詳細に解析した結果、がん細胞が骨に近づくと、骨膜の厚みが3~4倍に増加していることを見出しました(図1)。

次に、マウスを用いた口腔がん骨浸潤モデル(ネズミの頭頂部にがん細胞を注射で打ち込む実験)を新たに開発し、マウスの口腔がん病変を1細胞レベルの解像度で遺伝子発現解析を行ったところ、がん細胞が近接した骨組織では骨膜細胞が増加し、プロテアーゼ阻害因子Timp1(Tissue inhibitor of metalloproteinase-1; タンパク質分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼの活性を阻害する因子)の発現が顕著に増加していることが確認されました。
Timp1の骨浸潤における役割を生体レベルで検証するため、Timp1遺伝子を欠損させたマウスを解析した結果、Timp1欠損マウスでは、がんの骨への浸潤時に骨膜の肥厚が見られず、通常のマウスよりも骨浸潤が著しく進行して早期に死亡することが確認されました(図2)。

このことから、骨膜の肥厚はがんの骨浸潤を物理的に抑える「盾」として機能している可能性が示唆されました。

少し複雑な話になってしまいましたが、今回の研究でわかったことを簡単にまとめると、以下の通りです。

・がんが骨に近づくと、骨膜の細胞が Timp1 という物質を分泌する
・Timp1によってコラーゲンなどの物質が分解されず蓄積するため、骨膜が厚くなる
・厚くなった骨膜は、がんが骨に広がるのを物理的に防ぐ「盾」として機能する

これまでがんに対する生体防御として免疫細胞の働きが重要であることはよく知られていましたが、骨膜のように免疫細胞ではない非免疫細胞が抗がん効果持つことは知られていませんでした。
塚崎先生らは、非免疫系細胞による新たな抗腫瘍システムを「Stromal Defense Against Cancer (SDAC)」と名付けました。今後、口腔がん以外の腫瘍でもこのシステムが働いているのか、また、非免疫系細胞はどのような仕組みで腫瘍を認識しているのか、といった点の解明が進むことで、画期的ながん治療法・予防法の開発に繋がることが期待されています。

また、「外的な刺激によって骨膜が厚くなる(骨膜反応)」という現象自体は、1739年にフランスの科学者デュアメル(Duhamel)によって発見されました。
しかし、この現象は長らく、単なる炎症の副次的な反応と見なされ、その生物学的な意義やメカニズムについては約300年もの間解明されていませんでした。
今回の研究は、この300年にわたる謎に対して、一つの答えを提示する可能性があります。

日々の診療や日常生活で何気なく目にする現象の中に、未解明の謎がまだ眠っているかも知れません。
中には、誰も気づかなかった現象や、幾千人が何世紀にもわたり挑戦しても解き明かされていない謎もあるかも知れません。
基礎研究の醍醐味は、そんな未知の世界へ一歩ずつ近づき、ときには発見の瞬間に立ち会えることにあります。
未解明の謎に挑み、見えないつながりを紐解くことで、世界は少しずつ新しい姿を見せてくれるでしょう。
この壮大でロマンに満ちた探究の旅に、皆さんも一緒に出かけてみませんか?

参考文献
Nakamura, K., Tsukasaki, M., Tsunematsu, T. et al. The periosteum provides a stromal defence against cancer invasion into the bone. Nature 634, 474–481 (2024).
Johnson, D.E., Burtness, B., Leemans, C.R. et al. Head and neck squamous cell carcinoma. Nat Rev Dis Primers 6, 92 (2020).
東京大学プレスリリース「がんの進展を骨膜が止める―がんの進行を抑える新規治療の開発に道―」

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口腔がんについて知ろう

10月に入り秋の気配が感じられる頃となりましたが、まだまだ暑さが厳しい日が続いております。
今年は例年にない暑さが続いておりますので、水分補給や適度な休息を心がけてお過ごしください。

今回は健康を脅かす口腔がんについてお話したいと思います。

①口腔がんの定義・疫学

口腔がんとは、口の中にできるがんの総称です。
身体にできる全てのがんに対する口腔がんの割合は約1~3%です。
頭頚部がんに対する口腔がんの割合は約40~60%です。
男女比は3:2で男性に多くみられ、好発年齢は50~60歳代です。
口腔がんは、発生する部位によって以下の名称が付けられています。
舌にできる舌がん、歯茎にできる歯肉がん、頬の内側にできる頬粘膜がんなど口腔内の様々な部位に発生する可能性があります。口腔がんの中で特に多いのが、舌がんで約半数を占めています。

②原因は?

口腔がんは他のがんと同様にまだ原因解明されていない点も多くありますが、口の中に特殊な刺激が持続的に加わる事が関係しているとされています。
特殊な刺激とは以下のような例があります。

●喫煙

口腔がん最大の危険因子は喫煙です。
タバコの煙には多くの発がん物質が含まれています。
日本人を対象とした報告では喫煙者は非喫煙者に比べて口腔・咽頭がんに罹患する確率が約2.4倍になるとされています。
さらに喫煙者の中でも、累積喫煙指数(1日喫煙数×喫煙年数)が60以上であれば口腔・咽頭がんになる確率が非喫煙者に比べて約4.3倍になるとされています。
口腔・咽頭領域は喫煙の影響を受けやすく、特に顕著な部位は下咽頭です。
下咽頭がんは、喫煙者のリスクが非喫煙者に対して約13倍で、累積喫煙指数が60以上の者は約21倍にもなります。

●飲酒

飲酒は、喫煙に次ぐ危険因子です。
日本人を対象とした報告では、男性の場合、非飲酒者と比べて週1日飲酒する者は約1.8倍のリスクがあります。
その中でも週にエタノール300g以上(1日平均2合以上)飲酒するグループは約3.2倍のリスクがあります。
喫煙と同様に、口腔・咽頭の中で飲酒の影響を一番受けやすいのは下咽頭です。
週一回の飲酒者は、非飲酒者に比べて下咽頭がんのリスクが約3.3倍、さらに週に300g以上のエタノールを摂取する者は約10.1倍のリスクがあります。

飲酒と喫煙を両方行うことで口腔・咽頭がんのリスクが高まることが男性を対象とした研究で分かっています。
飲酒量は少ないが喫煙するグループと飲酒量は多いが喫煙しないグループではどちらも約2倍のリスクですが、飲酒量が多く喫煙を行うグループでは約4倍のリスクになると分かっています。
女性の場合でも同様に喫煙と飲酒は口腔・咽頭がんのリスクとなります。
女性の喫煙者は約2.5倍、週に150g以上飲酒する者は約5.9倍となります。
以上の統計より、喫煙しないこと、飲酒量を少なくする事が口腔・咽頭がんの予防で重要であると分かります。

●口の中の不衛生
多量のプラークや歯石、重度の虫歯や歯周炎の放置、などの口腔衛生状態が悪いとがんのリスクとなります。

●慢性的な刺激
お口の中に加わる慢性的な刺激とは、不適合の義歯を長期間使用することや歯の鋭利な部分が舌や頬の粘膜に当たり続けることなどです。
この様な物理的な刺激が長期に亘って加わることでがん化する可能性があります。

③予防法は?早期発見するには?

がん予防は一次から三次まであります。
・一次予防はがんにならないための予防です。

ご自身で生活習慣を整えることが重要になります。

以下のことを日頃から気をつけるようにしましょう。

1.たばこを吸わない、飲酒量を控える。
2.偏食をせずに栄養バランスの良い食生活を心がける。
3.歯磨きを丁寧に行い、口の中を清潔に保つ。
4.合わない入れ歯、破れたかぶせ物、治療していない虫歯があれば放置せずに歯科治療を受ける。
5.適度な運動を行い、適正体重を維持する。

・二次予防は、がんを早期に発見し治療することで、がんの広がりを抑えること、がんによる死亡を減らすことが目的です。
ご自身でお口の中に異常を感じたら、早めにがん検診を受けましょう。

・三次予防はがんになった後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図り社会復帰のためのリハビリテーションを行うことです。

④口腔がんのセルフチェック

初期の口腔がんは無症状なこともあるため、ご自身で手鏡を持ちお口の中をチェックしましょう。
用意するものは、手鏡と指に巻くガーゼやティッシュです。
以下に書かれている順番にチェックしていきます。
まず、明るい場所で手鏡を持ちお口を大きく開けましょう。
入れ歯をしている場合は外しましょう。

1.上下の唇の内側や歯茎①の状態を観察しましょう。
2.頬を指で軽く引っ張って頬の内面②を観察しましょう。
3.裏側の歯茎③を観察しましょう。
4.口蓋(上あご)④は少し上を向き色の変化を観察します。指で触れて、しこりや肥大の有無を確認しましょう。
5.舌の表面、左右の側面、上にあげて裏側⑤⑥と口腔底を観察しましょう。ガーゼやティッシュを巻いた指で舌を挟み、優しく引っ張るなどして異常がないか確認して下さい。

☑セルフチェック項目
口腔内の定期的なチェックと共に、日ごろから気を付けたいのが下記のような症状や状態です。
1つでも「ある」にチェックが入った人は、すぐに歯科医を受診しましょう。

①なかなか治らない「はれ」や「しこり」はないですか?
ない・ある
→口の中の肥大したところや触ってやや硬くなったりしているところは要注意です。

②粘膜が「赤く」なったり「白く」なったりしているところはないですか?

ない・ある
→粘膜が赤くなったり白くなったりしているのは「紅斑症」や「白斑症」かもしれません。どちらも前がん病変ですので要注意です。

③治りにくい口内炎はありませんか?
ない・ある
→口内炎は通常2~3週間程度で自然治癒することが多いです。1か月たっても治らないお口の中の荒れは要注意です。

④合わない入れ歯を無理して使っていて違和感がありませんか?
ない・ある
→がたついたり、噛むと痛みがある入れ歯を長期間使用しているとその刺激でがんが発生する可能性があるので要注意です。

⑤食べ物が飲み込みこみにくくなっていませんか?
ない・ある
→がんが広がり神経を圧迫すると見た目には変化がなくても、舌や頬の動きが悪い、しびれや麻痺があるなどの症状がでることがあります。要注意です。

まとめ

口腔がんの5年生存率は約60~80%とされています。
初期症状のうちに発見すれば、侵襲の低い治療で、後遺症がほとんど残ることなく、5年生存率は約90%以上であるという報告もあります。
しかし進行してしまったがんでは、手術により顎の骨を切除する必要性がある場合があります。
切除範囲が広いと食事や会話が困難になり、日常生活に大きな支障をきたすことになります。
だからこそ、早期発見が重要になります。
当院でも口腔がん検診を行っているため、少しでも気になっている方がいましたらスタッフにお気軽にご相談してください。

歯科医師 岡村 梓文

参考文献
・国立研究開発法人 国立がん研究センター
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8090.html

・日本歯科衛生士会
https://www.jdha.or.jp/topics/health/c/153/

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歯の色は何色?

皆さまこんにちは。梅雨が明け夏本番になりました。
猛暑続きの毎日ですが、皆さまお身体の調子はいかがでしょうか。
夏と言えば海水浴や花火大会、夏祭りなど様々な行事がありますよね。
そんな時に白い歯で笑えたら良いなと思ったことはありませんか?
今回は歯を白くするホワイトニングについてお話しようと思います。

●なぜ歯は黄ばむの?
●ホワイトニングで白くなるのはどういう原理?
●ホワイトニングで白くなる歯・ならない歯の特徴は?
そんな疑問に答えていきたいと思います。

●なぜ歯は黄ばむの?
歯の色が変色する原因には様々なものがありますが、加齢変化で歯が黄ばむ原因には大きく分けて以下の2つがあります。

①着色によるもの
②加齢変化により歯の黄色い部分が濃くなること

①この図は歯の断面図になります。
歯の頭の部分(歯冠)の表面を覆っているのがエナメル質と言われ、体の中で最も固い組織からできています。
そんな固いエナメル質ですが、目には見えない小さな傷や亀裂、凹凸があります。
飲食物の色素はこういったエナメル質表層部分に入り込んでしまいます。
さらに歯には再石灰化という機能があり、色素がエナメル質の内部まで取り込まれてしまいます。

②皆さんは人間の歯の色は何色?と聞かれた時どんな色を想像しますか。
多くの方は、白色を思い浮かべるのではないでしょうか。
歯の色調には、先程説明したエナメル質と象牙質の二層構造という関係性が深く関わってきます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

エナメル質の色調は灰白色~淡黄色で半透明となります。
実はそれほどくっきりとした白色ではなく、少し透け感があるのが特徴です。
そのためエナメル質の内側にある象牙質の色調が影響しやすくなります。
象牙質は名前の通りに象牙色(アイボリー)で黄色味かかっています。
エナメル質が薄くなると象牙質の黄色味が目立ちやすくなります。
さらに象牙質は加齢変化により第二象牙質という新たな象牙質が作られたり、象牙細管という管状の構造が閉塞されたりすることにより色がより濃く見えてきます。
歳をとると歯が黄色になるというのは、こういった歯の構造変化にも原因があります。

●ホワイトニングで白くなるのはどういう原理?
ホワイトニングは2つのメカニズムで成立しています。

①着色物質を分解してその色を除く
②歯の組織構造を変化させて、白く見えるようにする

①歯科で使用する漂白剤は過酸化水素となります。
過酸化水素は光・熱や化学触媒(酸性、アルカリ性)などの刺激が加わることで、活性化しヒドロキシラジカル(不対電子)を発生させます。
この状態のOH基は非常に不安定な状態となります。
したがって、OH基は安定化するために有機性着色物質から電子を奪います(酸化作用)。
こういった化学反応で着色物質が脱色・分解され無色化が起こります。

②着色物質が除かれることで、エナメル質の透明感がでます。
しかし、半透明なエナメル質の下の象牙質の色が透けてしまい、歯は白く見えません。
歯を白く見せるためには象牙質の色を覆い隠せるようにエナメル質の構造を変化させる必要があります。
エナメル質は、エナメル小柱という柱状の構造物が無数の束になってできています。
過酸化水素から発生した活性酸素が、エナメル質表層のエナメル小柱の構造を角状から球状に変化させます。
球状になることで人の目に入る反射・散乱光が増えて白く見えるようになります。
ホワイトニングでは、単に着色の原因物質を化学的に分解するだけでなく、歯の構造が物理的に変化して生じる「色の見え方の変化」も利用することで歯を白くしています。

●白くなる歯の特徴
白くなる歯は、一言で言えば健康な歯です。
虫歯がなく、神経のある歯は基本的に白くすることが可能です。

●白くならない歯の特徴
白くならない歯はいくつかあります。

①被せ物や詰め物の部分
ホワイトニングで白くできるのは天然歯で、金属やセラミック、樹脂などの人工物の部分は白くできません。
詰め物がある歯を白くしたい場合は、まずホワイトニングで白くした後に、その色調に合わせて詰め物をやり直す方法があります。

②金属によって変色した歯
銀歯などの金属を使用している場合は金属イオンが溶け出て、歯が黒ずんでしまう事もあります。
こういった場合もホワイトニングでは白くできません。

●白くなりづらい歯

①無髄歯、失活歯

歯の神経を取った歯や死んでしまった歯は通常のホワイトニングでは白くできません。
こういった場合は、歯の中に薬剤を使用するウォーキングブリーチという方法もあります。
濃く変色している象牙質に直接作用させるので、高い漂白効果が期待できます。
通常、目的の白さを獲得するまでには、変色の程度によっても異なりますが、漂白剤を数回、新しいものに交換する必要があります。

②テトラサイクリン歯

テトラサイクリン系抗生物質により変色した歯は、歯の内部まで変色しています。
そのため重度の変色の場合は、歯の表面に塗るホワイトニングでは白くすることが難しいとされています。

③加齢による黄ばみ
加齢変化によりエナメル質が薄くなり、象牙質の黄色が目立ちやすくなります。
若年者と比較するとホワイトニング効果が発現するまで時間がかかります。

④フッ素コーティングされた歯
ホワイトニング前にフッ素コーティングすると、ホワイトニング剤が浸透しにくくなります。
そのためフッ素コーティングする場合はホワイトニング後に行うのが良いでしょう。

⑤エナメル質が薄い歯
エナメル質形成不全症や歯の酸蝕症などエナメル質が薄く象牙質の色が出やすい歯は、ホワイトニング効果が得られにくい傾向があります。

⑥ホワイトスポット
歯の部分的な白斑をホワイトスポットと言います。
ホワイトニングによりホワイトスポットが強調され、歯の色調が不均一になります。
その場合は、ホワイトニング後に色調を合わせるような治療が推奨されます。

⑦犬歯や歯茎のきわ
こういった部分は象牙質の色調が出やすいため、他の部分と比べ白くなりにくい傾向がありますが、数回ホワイトニングを繰り返すことで改善が可能です。

今回のホワイトニングの説明は以上になります。
ホワイトニング最大の利点は歯を削らずに白くできることです。
歯の色が気になる方は、お気軽に当院の歯科医師や歯科衛生士にお声かけください。

歯科医師 岡村 梓文

参考文献
・日本歯科医師会ホームページ.“インプラント-歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020”https://www.jda.or.jp/park/trouble/white_02.html,(2024-7-17)
・千田 彰他編.保存修復学 第7版.医歯薬出版,2019.
・加藤 純二他編.これで納得!デンタルホワイトニング.医歯薬出版,2012.

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インプラント治療ステップガイド

皆さま、こんにちは。
梅雨に入り雨に加え、むしむしとした暑さをも感じる季節となりました。
水分や栄養をしっかり摂り、体調等お気をつけてお過ごしください。

さて、皆さんは虫歯や歯周病で抜歯をするとなった時に歯が無くなった部分をどうやって治療するかご存知でしょうか?
もともと歯のあった部分に金属のワイヤーで人工の歯を固定する「部分入れ歯」や、抜いた歯の両隣の歯を削って連結した被せ物を入れる「ブリッジ」、歯肉を開き骨にインプラント体を埋めて被せ物をする「インプラント」の3つの治療法があります。

今回はこの中でインプラント治療について詳しくご説明したいと思います。

①インプラントの仕組み

インプラントはインプラント体、アバットメント、上部構造の3つから構成されています。
「インプラント体」とはフィクスチャーとも呼ばれ、顎の骨に植わる部分のことです。
「アバットメント」とは日本語で支台という意味で、フィクスチャーの上にある人工歯の土台となる部分のことです。
「上部構造」とは、クラウンのことで種類としては一般的な被せ物と同じです。

②インプラント治療の流れ

インプラント治療の大まかな流れは「診査診断」「治療計画立案」「軟組織・硬組織マネジメント」「外科手術」「補綴治療」です。

〈診査診断〉
まずインプラント治療を行うにあたり、患者様それぞれの口腔内軟組織の視診や清掃状態の確認、欠損部分と対顎とのクリアランスの確認、X線画像による顎骨硬組織密度や分布の画像診断等を行う必要があります。
X線画像上での硬組織内部と分布状態把握を行うことでインプラント治療の可否を決定致します。

〈治療計画立案〉
治療計画とは、インプラント体を顎骨のどの部分にどの角度で埋入するか、どういった素材を用いて補綴処置を行うか等を決めることです。
具体的にはX線CT撮影によって得られた3Dデータを用いて、専用のソフトを用いてパソコン上で計画を立てます。

X線CT撮影では普段のレントゲン画像と違い平面ではなく、立体的な骨の形・神経の通り道を観察することができ、インプラント治療時には必須のものになります。

この画像はCT画像です。
下顎の中を通る下歯槽神経の位置をマーキングし、3Dデータ上に印記し、上部構造の位置などを考慮しながらインプラント体の長さや埋入部位と方向、深度を決定します。

〈軟組織・硬組織マネジメント〉
インプラント治療でインプラント体を埋入するにあたり重要になってくるのは顎骨の高さや幅です。
顎骨の骨は外傷や歯周病などで失われるだけでなく、歯の喪失に伴い萎縮し、上顎では上顎洞に、下顎では下顎管(下歯槽神経等)に近接します。
骨の吸収によりクラウンインプラント比や上部構造形態にも影響し、隣接する天然歯との並びにおいても不調和が生じることになります。
もし、骨幅の不十分な状態で埋入を行ってしまうと、埋入後に骨吸収が助長されてしまう可能性もあります。

硬組織マネジメントの方法として、1.自家骨移植2.骨再生誘導法3.上顎洞挙上術(ソケットリフト、サイナスリフト)4.骨延長術5.スプリットクレフト等の方法があります。

左下臼歯部に骨補填を行い、
インプラント体埋入

また軟組織の状態も重要な治療項目です。
軟組織マネジメントにおいては見た目やブラッシングのしやすさ等が重要な項目となってきます。
インプラント周囲にしっかりとした幅と厚みをもった粘膜が存在すればインプラント周囲粘膜界面における組織剥離に抵抗でき、インプラント体をしっかりと保護することができます。
また上部構造と調和した適度な幅と厚みのある粘膜が存在することで審美的にも優れた状態となります。
軟組織マネジメントの種類としては一般的な歯周外科治療で行われるような遊離歯肉移植術や結合組織移植術が行われます。
硬組織だけでなく軟組織の状態も同時に加味し、計画立案することがインプラント治療を成功させるために不可欠となります。

  

〈外科手術〉
治療計画立案後はいよいよインプラント体埋入の外科手術となります。
インプラント体埋入手術には1回法と2回法があります。
1回法はインプラント体を埋入後、インプラント体上部あるいはアバットメントを粘膜上に露出しておき、粘膜を閉鎖せずにインプラント体と骨の結合を待ち、2回法ではインプラント体埋入後、粘膜を完全に閉鎖し口腔内に露出しない状態で骨との結合を待つ方法です。
2回法では骨との結合後、アバットメントを連結させる二次手術が必要となってきます。
1回法は二次手術が不要であることが大きな利点で、患者様にかかる負担が少なく、治療期間を短くすることができます。
その一方でインプラント体あるいはアバットメントが口腔内に露出していることでインプラント体に外力が加わるリスクがあります。
1回法は欠損部の骨の状態が良好で、二次手術時に軟組織マネジメントを併用する必要のない場合などに適用となります。

2回法ではインプラント体は粘膜に覆われ口腔内に露出しないため、インプラント体の安静が確保できることが大きな利点です。
一方で二次手術が必要となるため1回法と比較して侵襲が大きくなってしまいます。
2回法はインプラント埋入時の固定が獲得できない場合や骨造成が必要になる場合に適応となります。

このように2通りの方法があり、患者様の口腔環境または体調等を鑑み、慎重に術式を選択していきます。

〈補綴治療〉
インプラント体を埋入後、アバットメントを装着し、型取り後に上部構造を作成・装着し、インプラント治療が一通り終了します。
上部構造とインプラント体との連結方法として、スクリュー固定式とセメント固定式の二種類が存在します。
それぞれ利点欠点が存在しますが、状況に合わせて選択します。

スクリュー固定式では上部構造とインプラント体とを小さなスクリュー(ねじ)を用いて固定します。
セメントを固定に用いないので、高い適合が求められるためインプラント体との適合性良好です。
また、容易に取り外しができるためメインテナンスがしやすいのも大きな利点です。
一方、スクリューを通す穴(アクセスホール)が上部構造咬合面に存在するため、アクセスホールを封鎖したとしてもセメント固定式に比べると審美性に劣るのが欠点です。

セメント固定式では上部構造とインプラント体とをセメントを用いて固定します。
スクリュー固定式と異なり、上部構造にアクセスホールが存在しないため審美性に優れます。
一方、仮着用セメントを用いるため維持力コントロールが難しいです。
また、あふれたセメントを取り残す可能性もあり、セメントがインプラント歯周炎の原因にもなる可能性があることが欠点と言えます。

以上のことから現在では、取り外しができメインテナンス性にも優れるスクリュー固定式の固定方法が主流になりつつあります。

 

③油断できない!インプラント治療のその後

インプラント治療で大切なのはメインテナンスです。
インプラント治療というのは、異物を生体内に埋入し、上皮を貫通させ口腔内に露出させるといういわば病的な状態を保つという特殊性から、定期的なメインテナンス・リコールが重要になります。
5年以内に起こるインプラント治療後の併発症で多いものは「歯冠前装部の破折」や「インプラント周囲炎や軟組織トラブル」、「スクリューの緩み」等が挙げられます。
特にインプラント周囲炎になってしまうと、インプラント周囲の軟組織の炎症や骨の進行的な吸収が起き、最悪の場合インプラント体を除去しなければならなくなってしまうこともあります。
ブラッシング指導や機械的クリーニング、プロービング検査、抗菌療法、エックス線検査などを行い、インプラント周囲軟組織の初期病変を早期発見し、対応できることが大切です。

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インプラント治療の流れとメインテナンスについて説明いたしました。
ただ埋めるだけではなくしっかりとした術後管理が必要となります。
歯科医師だけでなく、患者様の日ごろの歯ブラシやフロスをしていただくことで共にインプラントを維持していきます。

長くなりましたがインプラント治療の概要は以上のとおりです。
インプラント治療のほか、入れ歯やブリッジ等につきましても、何か分からないことがありましたら、いつでもご質問ください。

歯科医師 濱田 崇人

参考資料
・日本歯科医師会ホームページ.“インプラント-歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020”.https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html,(2024-6-3).
・赤川 安正他編.よくわかる口腔インプラント学 第4版 .医歯薬出版,2023.
・宗像 源博.エビデンスに基づいたインプラント治療・骨造成: Early Failure回避のためのコンセプト.医歯薬出版.2024,

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歯周病を治して長生きしよう!

皆さまこんにちは。
6月に入り木々の緑が色濃く美しい時期になりましたね。
日差しも強くなり、初夏の気配を感じる今日この頃ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
この時期は、新年度の疲れが出やすい頃でもありますので、どうかお身体を大切になさってください。

本日は、最も多い口腔疾患『歯周病』についてのお話しをさせていただきます。

《歯周病とは??》
歯周病原細菌と呼ばれる細菌の感染によって引き起こされ、歯を支える歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に炎症が起こる病気です。

《なぜ歯周病が起こるのか??》
もちろん歯磨きをしないことは原因の一つですが、それだけではありません。
生活習慣や、さらには細菌に対する患者さん固有の感受性も大きく関わってきます。

《歯周病と全身の関わり》
歯周病は局所的な疾患ですが、歯周ポケット内の感染からいくつかの経路を経て、全身へと波及していきます。
経路のうち、1つは細菌感染の波及(口腔細菌の直接的作用によって引き起こされる、口腔以外の場所での菌血症や感染)、もう1つは歯周病の炎症反応が全身の炎症に影響をもたらすパターンです。

健康な時は、歯肉構内上皮な局所自然免疫は、自然なバリアーとして機能し、細菌の侵入を予防します。しかしながら、歯周病になるとバリアーとして機能しなくなり、細菌の入口となってしまいます。
特に、菌血症は、歯磨き・食事・口腔内診査・歯内治療の機械的な手段で悪化することがあります。

《歯周病新分類の登場》
従来の歯周疾患分類はArmitage が 1999年に報告しました。この分類では、「過去と現在」のみを反映していました。
18年の年月を経て、今回の「歯周病新分類」は、従来の「過去と現在」を反映する役割を担うステージ分類に加え、疾病活動性やリスクを示すグレード分類が、「未来」の進行リスクを示唆しています。
また、新分類の最も大きな変更点として、歯周病に影響与える全身的なファクターとして、「糖尿病」と「喫煙」が含まれていることです。

《歯周病と糖尿病の関係》
糖尿病とは、インスリンの分泌量の低下やインスリンの感受性の低下などのインスリン作用不足によって引き起こされる高血糖状態を特徴とする代謝症候群です。
糖尿病の概念として、

①高血糖で代表される特徴的な代謝異常
②その原因としてのインスリン作用の不足
③代謝異常が続くと特有の合併症が起こる

など、大きく3つの特徴があります。
糖尿病によって高血糖状態が持続すると、様々な合併症を引き起こす事は多く周知されています。
糖尿病の合併症には感染症も挙げられ、免疫細胞の機能の低下などによって感染状態になる歯周病も感染症の1つです。

歯周病は細菌感染がトリガーとなる炎症であり、糖尿病は先天要因を除くと、肥満、食生活、運動不足などによる環境因子が作用し、全身の慢性的な炎症がトリガーとなって、インスリンの抵抗性が現れる代謝性疾患である「炎症」を共通因子として、2つの疾患が双方に影響を及ぼし合います。

《歯周病が全身の炎症状態を亢進させると??》
歯周病が起きると、どのように血糖値に影響及ぼすのでしょうか?
歯周病が発生する過程では、炎症サイトカインや炎症伝達物質が産生され、それらの血中濃度は有意に上昇します。
インスリンを受け取る反応が鈍くなり、細胞表面のゲートが開かず、細胞が血中のグルコースを細胞内に取り込むことができなくなり、血中グルコースの濃度が上昇します。
この状態がインスリンが正常に機能していない状態で、糖尿病状態をさらに進行させるだけでなく、心血管疾患・アテローム性動脈硬化・周産期合併症・関節リウマチ・肺炎・慢性腎臓病・認知症・がん、など全身の病気との関わりがあります。
高血糖状態が続くことは、全身の免疫反応のバランスを壊して、さらなる炎症を引き起こしているのです。

《歯周病とどう向き合っていく??》
あらゆる病気と相互関係にある歯周病ですが、その疾患やリスクとなる疾患(高血圧や肥満など)をまず改善させることが必要です。
各々の疾患の治療・生活習慣改善指導と同時に、口腔ケアをしていくことは悪化のリスクを下げることができます。

つまり、食べることは、生きることにつながります。
食べるためには口腔内が良好な状態であることが重要になります。
新生児からお年寄りの方皆さん、口腔内に症状が出る前に、定期検診をして健康な生活を長続きさせましょう。

歯科医師 松井玲奈

参考文献
・木村 英隆他編.特定非営利活動法人日本臨床歯周病学会.歯周病と全身疾患: 最新エビデンスに基づくコンセンサス.デンタルダイヤモンド社,2023.
・村上 伸也他編.臨床歯周学 第3版.医歯薬出版,2007

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気になるお口の臭い

皆さま、こんにちは。
もう気づけば春の訪れを感じる季節となり、新生活を始める方も多いことでしょう。
新しい環境に胸踊らせつつ、不安に感じることも少なくは無いと思います。
感染への配慮はしつつも、長らく続いていたマスク生活も徐々に薄れつつある今、改めて自分の口周りの状態について見直すこともあるのではないかと考えます。

本日は「口臭」をテーマに少しお話させていただければと思います。
皆さんは自分の口臭について、気になる瞬間はありますでしょうか。
コロナの影響でマスク着用時間が長くなり始めた頃に、口のネバつきが増え、一度は心配になったことがあるのでは?と筆者は勝手に想像しております。
口臭の原因は様々であり、喫煙習慣、全身疾患、口腔乾燥や口腔内の清掃状態、歯周病等々が挙げられます。
他の人から特に指摘はされたことはないが、なんとなく不安を感じているという方もいらっしゃいます。
そもそも、口臭は自分で感じにくいという点が、1つの難しいポイントだと思います。
マスク着用は、口呼吸の頻度増加による口腔乾燥と、自分の息が外に出づらいという点が口臭への懸念と繋がっていると考えられます。

「口臭を人に指摘された」、もしくは「自分で気になる」と感じたとき、まず原因を疑うのは、息の出口である口腔内の環境です。
我々歯科では口臭の悩みについて、患者様からご相談を受けることもありますが、歯科では口臭をどう診断しているのか、どう対応しているのかを簡単にまとめてご紹介いたします。

まず診断に関してですが、問診、質問票等に加え、特徴的な検査方法が大きく分けて2つあります。

①人の嗅覚を使う
②測定機器を使う
の2つです。

①は口臭官能試験というもので、手順はシンプルに、第三者に口臭を嗅いでもらい、0~5の6段階評価を行うものです。
原始的ではありますが、後述する現在の小型機器では測定されない成分も含めて評価可能であるため、一番簡便かつ実用的で総合的な評価が可能と言われています。

②の機器にはいくつか種類があり、大学のような大型施設に配置してある口臭測定用ガスクロマトグラフィーといったものから、オーラルクロマ(エフアイエス株式会社)、ブレストロン(株式会社ヨシダ)のように小規模なクリニックでも使用可能な小型の口臭測定器があります。

オーラルクロマ 
((株)日本歯科商社 商品購入ページより参照)

【測定時間わずか30秒、どこでも測定できる口臭測定器】
小型・軽量で持ち運びもラクラク。測定ホースが1mあり、チェアサイドでもカウンセリングルームでも場所を選ばず測定できます。測定時間もわずか30秒で患者さんを煩わせません。

ブレストロンⅡ
((株)ヨシダ 商品情報ページより参照)

それらの機器は全て、口臭の主な原因物質とされている揮発性硫黄化合物(VSC)をターゲットに計測しており、その中でも硫化水素[H2S]、メチルメルカプタン[CH3SH]、ジメチルサルファイド[(CH3)2S]の3つが項目として挙げられます。
硫黄の匂いがあまり心地の良いものではないことは想像しやすいと思いますが
一般的に

硫化水素[H2S]:卵の腐ったような匂い
メチルメルカプタン[CH3SH]:魚や野菜の腐ったような匂い
ジメチルサルファイド[(CH3)2S]:生ゴミのような匂い

といったように、少し異なるニュアンスで表現されています。
(イメージしづらいかもしれませんが・・・)
これらの総量や、一部の機械では3つのバランスを測定することにより、口臭の原因を予測することが可能となっています。
例として、通常、硫化水素とメチルメルカプタンが総量の8割を占めているのですが、
この2つのバランスは

舌の汚れ(舌苔)が原因 → 硫化水素 > メチルメルカプタン
歯周病が原因      → 硫化水素 < メチルメルカプタン

以上のような傾向があるとされています。
また、ジメチルサルファイドが高値を示した際には、口腔内のみでなく腎不全などの全身的な要因が存在する可能性を示していると言われています。

検査結果により出た数値と、問診や質問票、口腔内の状況から総合的に判断して、診断を出すことになります。

次に歯科がどう対応しているかについてです。
口臭は、舌苔が原因となっていることが多く、その殆どが舌清掃による舌苔除去で改善すると言われています。
もちろん普段の歯磨きによるプラークコントロールや口腔乾燥への対応も重要となっています。
一方、歯周病が原因となっている場合は、重症度にもよりますが舌苔と同じく自分自身でのプラークコントロールに加え、歯石除去やポケット内の洗浄と、重症であれば歯周外科手術などが適応となるため、すぐ根本が解決して完治とまではいかないかもしれません。
しかし、ある程度短期間での症状改善が見込める可能性は十分にあります。
また、全身状態の関与が示唆された場合は、内科消化器系や呼吸器系などの医科への紹介を行う必要があります。
腎臓や肝臓の機能不全だけでなく、内服している薬剤が関与している可能性もあるため、再度身体の状態を確認することが大事になります。
口臭の原因が複数関与している際は、歯科での診察も並行して行うケースも考えられます。

前半に述べたように口臭は自覚することが難しく、あくまで他人の客観的な評価によるものであるため、不安に陥りやすいという側面があります。
人に直接相談しづらい症状ではありますが、口臭から、普段見えていなかった身体のサインを読み取ることができる可能性がありますので、なるべく1人で悩みすぎず、歯科等の医療機関で相談することをおすすめいたします。
原因や状態の程度が把握できると、気持ちもかなり楽になると思います。
お悩みの方は、いつでも気軽にご相談ください。

歯科医師 白井 健太郎

参考文献
1)東京医科歯科大学 歯科東京同窓会報 No.201.
医歯学総合研究科 健康推進歯学分野 財津 祟.p40-43

2)口臭.MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/

3)株式会社日本歯科商社.オーラルクロマ
https://www.dentalsupply.co.jp/product/detail_303.html

4)株式会社ヨシダ.ブレストロンⅡ
https://service.yoshida-dental.co.jp/ca/series/10757

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口が乾く 口腔乾燥症

皆さま、こんにちは。
日差しが春の訪れを感じる季節となりました。
同時に花粉などの影響により乾燥によるお肌トラブルに悩まされてる時期でもありますね。
今回はそんな乾燥にまつわるお話をさせていただきたいと思います。

「最近お口の中が、 乾いたな…」 と感じることはないでしょうか?
現代では高齢化社会に伴い、 口腔乾燥感を主訴に来院される患者様が増加しています。
疫学的には、 全高齢者のうち12 ~39% の罹患率があると言われています。
次の図は年齢別口腔乾燥自覚度を示します。

では、 実際に口腔乾燥症とはどういったものなのでしょうか?

●口腔乾燥症の概念と症状

口腔乾燥症とは一般的に「口腔内の水分減少により、 直接的または間接的におこる一連の口腔内におこる不調」 と定義されます。
臨床的には、 唾液の分泌量そのものが低下している唾液分泌低下症(SGH) と唾液分泌量にかかわらず 口腔乾燥感を感じるものdry mouth の大きく二つに分けられます。
症状として直接的なものでは口腔粘膜の感覚異常、 味覚異常、 唾液の粘稠感などです。
また、 間接的なものでは飲み込みにくさ、 噛みにくさなど様々です。
それらによって、 口腔乾燥でQOL が低下する可能性は否定できません。

●口腔乾燥症の原因

口腔乾燥症の多くが多因子性疾患であることから、 口腔乾燥症と断定することは難しいこともあります。

・加齢により生じたもの
・高血圧症、 糖尿病、 シェーグレン症候群、 自己免疫疾患などの全身疾患
・唾液分泌に影響を及ぼす抗ヒスタミン薬、 抗うつ薬、 抗精神病薬
・放射線治療による晩期障害
・ストレス
・水分減少

などです。
また、 昔に比べ柔らかい食べ物を好んで食べる風潮から、 咀嚼時間が減り口腔周囲の筋肉の衰えなども原因として挙げられます。

●診査

ムーカス試験

舌の表面とセンサ部分が平行になるよう押し当て3 回測定することで、 口腔湿潤度を測ります。

ガムテスト

10 分間ガムを嚙み、 分泌された唾液を容器に吐き出し計測します。

サクソンテスト
乾燥したガーゼを2 分間一定の速度で噛み、 ガーゼに吸収される唾液の重量を測定して唾液の分泌量を測定します。
その他の検査として、 唾液腺シンチグラフィー、 唾液腺造影検査などがあげられます。

●治療

口腔乾燥症による治療法はそれぞれの原因に対する原因療法が主体ですが、 それでも改善が見込めない場合では口腔湿潤剤を使用するなど対症療法も視野に入れ対応することもあります。
また、 唾液腺マッサージなどのセルフケアを行い、 直接刺激を与えることで効果の増大も期待できます。

耳下腺:耳の横を手指で後から前に向かって回すようにマッサージします。

顎下腺:親指の腹で舌を持ち上げるように押します。

舌下腺:指を下のアゴの骨の内側の柔らかい部分にあてて耳の下からアゴの下までを5ヶ所くらいを1~2秒押します。

原因に対する処置法は、

1.薬物性唾液分泌量の低下
薬が唾液分泌の低下を引き起こすことも多いです。
しかし、 明らかに服用している薬が原因だと分かっていても独断で中止するのではなく主治医と相談して、 服用薬の変更または、 量の調節を行うようにします。

2.ストレス
ストレスが原因の場合は、 心理士などによるケアが対象となります。
また、 心理的要因から薬が処方された場合、 唾液分泌量と関わりがあるかなど、 主治医と相談する必要があります。

3.唾液腺の器質的障害((放射線晩期的影響)
放射線により、 唾液腺そのものが破壊されてしまうことがあります。
その場合、 口腔湿潤剤などによる対症療法が基本となります。
また、 上記でも説明をしたように、唾液線の一部が機能している場合は、 セルフケアによる唾液腺マッサージが有効となります。

●最後に

口腔乾燥症により、 美味しい食事や友人との会話ができず、 個人のQOL に支障をきたしていませんか?
少しでも気になる場合は、 お近くの歯科医院を受診されることをおすすめします。

歯科医師 永井 綾香

参考文献
九州歯科大学生体機能学講座老年障害者歯科学分野 口腔乾燥症の病態と治療 柿木保明
ドライマウスと環境因子 日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座 日本歯科大学東京短期大学

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歯科と栄養の関わり

皆さま、こんにちは。
寒さが一段と厳しくなり、冷え冷えとした日が続いております。
冬は体調管理が難しいですが、温かい飲み物や栄養バランスの取れた食事でお体を温めて、お仕事や日常生活でお疲れが溜まらないよう、この寒い季節、どうぞ温かくお過ごしくださいませ。

さて、今回のテーマは「歯科と栄養の関わり」で少しお話させていただこうと思います。
我々にとって食事とは常に日々生きるために必要な要素であり、娯楽の1つとなっています。
いかに食事によって幸せを得つつ、自身の身体の調子を整えるかが、年を重ねるにつれてより大きな課題となっていくのではないでしょうか。
栄養バランスや量の話ですと、生活習慣病も大きなテーマですが
高齢化が着々と進んでしまっている現代日本では「高齢者の低栄養」についての話もよく耳にするかと思います。

そこには上図のような負のサイクルを代表例として、

・「栄養のことはわからないし特に気にしていない、好きなものだけ食べたい」
・「病気などで気力体力が落ちてしまい、食事で疲れてしまう」
・「味を感じにくくなった」
・「食べたくてもうまく噛めない、飲み込めない」

等々といった様々な原因が存在しています。
これらの全てを歯科が解決することは不可能です。
しかし、歯を含めたお口の環境と食事、栄養は切っても切れない関係ですので、歯科医師は一つの視点として、他の職種の方々と協力しながら一人一人の楽しい食事を支えていく取り組みを進めています。

実際に国の制度としては現在どのような動きがあるのでしょうか。
厚生労働省は、「来年4月(2024/4)の介護報酬改定に向けて、利用者のリハビリテーション、口腔ケア、栄養管理の推進を図る方策を検討していく」と発表しています。
在宅でも施設でも栄養管理を必要とする利用者はまだまだ多いことから、
リハビリ、口腔ケア、栄養管理を一体的に運用することが、自立支援・重度化防止の効果を更に高めることができる、と期待されています。
今後より一層、介護施設や居宅サービスといった環境下において歯科と栄養が関わる機会が増え、より適切な支援が可能になると予測されます。

先程も述べた通り、高齢者の低栄養に対して、歯科のみで解決できる範囲は限られてしまうため、多職種での連携はもちろん必須になりますが
もし、まず歯科で低栄養について注目するとなると

・身体的・社会的状況の把握
 (既往歴、現在治療中の疾患、体調や自立度、生活環境など)
・経時的な体重変化
 (最低1か月単位での変化を見ることで栄養状態の簡単なスクリーニングが可能)
・食事状況の把握
 (どんなものをどれくらいの量食べているか、誰が食事を用意しているか、
食事中にムセが起きていないかどうか)
・食形態について適切かどうかの判断
 (各々がそれぞれの機能に適した形態か、安全においしく食べられるか)
・その他、口腔内の環境で食事摂取に悪影響を及ぼす因子
 (う蝕や歯周病はないか、義歯は疼痛なく適切に使えているかどうか、乾燥していないか)

等といった情報が必要になってくるかと思います。
ここからまず大きな問題となっている因子を歯科的な視点で捉え、必要な情報を医師や管理栄養士などといった他の職種と共有し、解決策を模索するといった流れになります。

いかがでしたでしょうか。
省いてしまっている点はございますが、歯科が栄養に関わる仕事も担っており、徐々に活躍する場が増えていきそう、ということをなんとなく知っていただけたらと思い、書かせていただきました。

今回は低栄養についてのみ書かせていただきましたが、生活習慣病等の偏った食事や食べすぎにもお気をつけください。
何か質問等ございましたら、お気軽にご相談ください。

歯科医師 白井 健太郎

参考文献:歯科と栄養が出会うとき. 菊谷武・尾関麻衣子.2023-10-29
https://i.care-mane.com/news/entry/tanaka202300919
https://i.care-mane.com/news/entry/2023/09/20/132209
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/

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顎が痛い!顎関節症のお話

皆様こんにちは。
秋も一段と深まり、紅葉の美しい季節となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、気候も過ごしやすくなり食べ物も美味しい時期ですが、ご飯を食べたり口を開けた時音がする、痛いと感じることはないでしょうか。
今回はそのような症状が出る疾患の一つである、顎関節症についてお話しさせていただければと思います。

1)顎関節症の概念

顎関節症は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名です。
その病態は咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症です。

2)顎関節症の病因

顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多いといわれています。
日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり、個体の耐性を超えた場合に発症するとされています。
ここでお話しするのが、個別対応の重要性です。
年齢、性別、社会背景などによって発症因子やリスク因子が全く異なります。
例えば、近所に、すごくおいしいパン屋さんができたので、朝、昼、晩とフランスパンを食べ続けたら、痛くて口が開かなくなった。
あるいは、

・あごにいいと聞いて
・ぼけの予防によいと聞いて
・体に良いと聞いて

起きている間はずっと一日中硬いガムをかんでいました。
などといったことはないえしょうか?
このような医療面接を通じて状況を把握することが、管理、治療を行う上でKey pointとなってきます。

3)顎関節の罹患状況

「平成28年歯科疾患実態調査」をもとに顎関節に何らかの症状がみられる患者数を推定すると約1900万人となります。
癌は高齢になるほど患者数が増えますが、顎関節症は高齢になると患者数が減ります。
すなわち疫学的には、顎関節症は予後の良い、加齢とともに自然治癒する疾患と言えます。
ただし予後が悪く慢性化する患者も一定数存在します。

4)病態分類と治療について

・顎関節症の病態分類(2013年)

【○咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
物理療法(咀嚼筋マッサージ)
運動療法(開口ストレッチ)
温熱療法
口腔内装置(オクルーザルアプライアンス)
※TCH(歯列接触癖のことがあり、上下の歯を持続的に接触させることを言う)

【〇顎関節痛障害(Ⅱ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDS)
適応外使用(「顎関節症の関節痛」に対して)
ロキソプロフェン(ロキソニン)
ジクロフェナック(ボルタレン)
ナプロキセン(ナイキサン)
変形性関節症なら
アセトアミノフェン(カロナール)など
※NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬の略で解熱鎮痛薬と同義語として用いられる)

【〇顎関節円板障害(皿型)】

・復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)保険適応
に加えて
痛みを伴う場合はNSAIDSを投与
すごくラウドな雑音(大きな音)は内視鏡による処置も検討します。
音が鳴るのが怖くて大きく口を開けないなどといった行為は逆効果となります。

・非復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)(顎関節円板の整位が可能な症例では試みる)
整位が不可能な症例では、顎関節可動域訓練(モビライゼーション)
痛くてもリハビリなので頑張って開けましょうと応援します。
難治の場合は内視鏡手術も視野に入れます。

【〇変形性顎関節症(Ⅳ型)】
臨床症状として、顎関節痛、開口障害あるいは間接雑音のいずれか1つ以上を呈するので、治療は他の病態に対する治療に準じます。

ここまで顎関節症についてお話しさせていただきました。先にも述べたように顎関節症はきちんと管理することで治癒していく可能性が高い疾患です。
そのため、過度に心配する必要はありませんが、あまり改善が見られない場合、悪化しているような場合には一度早めの受診をお勧めします。

歯科医師
永井 綾香

参考文献
顎関節症の指針2020(一般社団法人日本顎関節学会編)
がんの統計2022(公益財団法人がん研究振興財団)

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口腔アレルギー症候群

皆さまこんにちは。
時折感じるさわやかな風に、秋を感じるようになりました。

秋にはコスモスや金木犀など、季節の花も多く見られる時期ですが、実は秋にも花粉が飛んでおり、「秋の花粉症」を患っている方もいらっしゃるかと思います。
今回は、花粉症との関わりが注目されている「口腔アレルギー症候群」についてお話ししようと思います。

●口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)とは?

1987年 Amlotらにより提唱された概念であり、何らかの食材によって口腔内や咽頭にアレルギー反応が出る病気とされています。
果物や生野菜に含まれるアレルギー反応の原因となるたんぱく質(アレルゲン)が、口の中の粘膜に触れて起こり、体内のIgE抗体(アレルギー物質に対する抗体)が関係しています。
また、花粉症の人が果物や野菜を食べた場合に際に生じるものを、『花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)』と呼ぶようになりました。

●どんな症状が起きる?

果物や生野菜を食べた直後から数分以内に唇や舌、口の中の粘膜、咽頭にかゆみやピリピリとしたしびれ、むくみなどが誘発されます。
ごく稀に、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こすこともありますが、多くは食後しばらくすると自然に消えるものがほとんどです。

●花粉症と食べ物にはどのような関係がある?

花粉症は、口腔アレルギー症候群の発症と同じく、目や鼻に入ってきた花粉からアレルギー反応の原因となるタンパク質(アレルゲン)が出されることで、目の痒みや鼻水といった症状を引き起こします。
花粉と食べ物の一部の間で、このアレルゲンの構造が非常に似たものがあることから、花粉症の人で口腔アレルギー症候群が発症しやすくなっていると考えられます。

●どんな食べ物で症状が出やすい?

リンゴやモモなどのバラ科の果物や、メロンやスイカなどのウリ科の果物で起きやすいとされています。
また、以下の図のように、反応する花粉の種類によって、口腔アレルギー症候群の原因となる果物や野菜は変わってきます。

●子供に発症は多い?

年齢層の幅は広く、大人になってから突然症状が出ることもあります。
また発症にも個人差もあるため、特定の食べ物で違和感があれば専門医の受診をお勧めします。

●対処法は?

根治療法は無く、症状の出た食べ物を避けることしかできません。
しかし、原因となるたんぱく質(アレルゲン)は熱や消化で変形し、発症しにくくなるため、加熱や加工で食べるなどの工夫を行うことで対処することが可能です。
症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬が有効とされています。

いかがでしたでしょうか?
今回、「口腔アレルギー症候群」についてお話ししましたが、お口の粘膜の異常は、口腔アレルギー症候群以外にも病気が考えられます。
何かおかしいな?と思いましたら、お気軽に歯科医院にご相談ください。

歯科医師 奥村 知里

参考文献:「口腔アレルギー」治療法は.朝日新聞.2022-05-04.p.16.
https://www.tanijiri.com/specialty/oas
https://www.kyowakirin.co.jp/kahun/about/oas.html
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14

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